第56章 探しもの
二人はそれぞれ十冊以上の本を持ち、暗くなった道を歩いて冨岡邸へと向かう。
「とりあえず急ぎ報告した方がいいですよね。明日朝戻って…悲鳴嶼さんに相談して……。皆にはどこまで報告したらいいかな……」
「光希、少し頭を休めろ。薬は急ぎかもしれないが、報告ならいつでも出来る」
「はい」
「お前の事を知っても柱たちは大丈夫だ。お前から離れていかない」
「………」
「大丈夫だ」
「………、はい」
「抱え込むな」
「はい」
「周りを頼れ」
「はい」
珍しいくらいに喋る義勇。
心配をしてくれているのだとわかる。
「やっぱり義勇さんに付いてきてもらって正解でした。あなたが暇で良かった」
「…………」
「俺一人だったら発狂してました。はは」
「我妻の方が良かっただろうがな」
「どうでしょう。もちろんあいつも頑張って俺の混乱を抑え込んでくれただろうけど、今回は義勇さんで良かった。義勇さんじゃなきゃ駄目だった気がする」
「そうか」
「叱ってくれてありがとうございました」
「……ああ」
「俺は逃げちゃ駄目なんだ。ちゃんと立たなきゃ。……善逸は俺に甘いから、よしよしする手法を取ったと思う。人に迷惑をかけない限り、あいつは弱ってる俺を怒らない」
「…………」
「俺はこの服を着ている限り、もうみっともない姿は見せちゃいけない。例え、あいつの前でも」
「……そうだな」
「でも…、義勇さんの前だけはいいですよね。俺の、師匠だから。へへ」
光希はそう言って笑った。
「ああ。お前は俺の可愛い弟子だからな」
義勇は光希の頭を撫でた。
「ん?……可愛い?可愛いって言いました?」
「……言ってない」
「俺、可愛がられてたんですね?初めて言われた気がします」
「………」
「へへへっ」
「………」
義勇が歩く速度を上げる。
光希が追いかける。
「照れ屋さんなんだから」
「………」
「そんなに速く歩いたところで、俺を振り切れると思ってます?」
「………」
義勇が走り出す。
光希が追いかける。
「あっはは!」
「……?」
「楽しいですね!!」
辛くないはずないのに光希は笑う。
本当に強くなったと義勇は思う。
子どもみたいに笑いながら走って追いかけてくる光希に、義勇も少しだけ笑った。