第56章 探しもの
平安時代の医者が鬼舞辻という鬼を作り出した。
その人物が、如月家の先祖だった。
医者は殺されたが、鬼舞辻という化け物を生み出してしまったことを恥じ、如月の者たちはずっと忘れずにそれを語り継いできた。
『我々はとんでもないことをしたのだ。必ず鬼を滅しなければならない』と。
そして、継国縁壱が誕生し、彼と日の呼吸に光明を見出した如月家。
縁壱が呼吸を託した竈門家を守ることにした。両家の間で約束を交わし、けして鬼に露見せぬように、ひっそりと寄り添い続けた。
もしも竈門家のヒノカミ神楽継承者が鬼になり、日の呼吸が鬼の手に渡ってしまったら、鬼舞辻を討てる大いなる希望を持った剣士がこの世から居なくなる。
それはあってはならない。
如月家の者は、医者の手記を元に作られた特殊な薬を飲み続けた。それは鬼となった者を、再び人へと戻す薬。
そして、如月家は代々竈門家から嫁をとり、『竈門の血』と『人間に戻す薬を飲み続けた血』とで次代を作り、ここまで繋げてきたのだった。
如月家の血で、鬼となった竈門家の者を人に戻せる。少なくとも、如月家の人間はそう信じている。
まるでそれを信じて続ける事で、この世界から許しを請うかのように……
光希は涙を流す。
隊士のほとんどは鬼に大切な人を殺されている。
自分は、その鬼を作りだした諸悪の根源の末裔なのだ。己に流れる血に、嫌悪感と罪悪感が押し寄せる。
悲しくて、不安で、辛くて、申し訳なくて、光希は声をあげて泣いた。
自分も両親を鬼に殺された。
しかし、それは自業自得と言えなくもない。今まで鬼を恨んできたが、そのこと自体、愚か極まりなくて片腹痛いと思えてしまう。
光希は床にうずくまって泣いた。
義勇が背中を撫でてくれた。