第7章 冨岡邸
その夜、布団の中で光希は思った。
……成人男性は凄いな。わからないと言いつつ、ある程度女子のことも知ってるんだな。
それに比べて、善逸や炭治郎の反応は…ふふふ、懐かしいの思い出した。
そうだ。休みになったんだから、手紙を書こう。ずっと書けてなかったもんな。皆元気にしてるかな。
善逸……何してるかな。
仕事、行ってるかな。ゴネてなきゃいいけど。
皆に書きたいけど、手紙が山盛りになったら鴉に悪いかな……
そんな事を考えてるうちに眠りについた。
翌早朝、起こしてもいないのに見送りに出てくる光希。
「ご武運を」と青白い顔で礼をとる。
返事はないものと思っていたが、「ああ」と返ってきた。頭にぽんと手が置かれ「お前はしっかり休め」と言われる。
「はい」
「行ってくる」
そう言って、義勇は出発していった。
早く追い付きたいのに。生理痛なんかで止まっている己が歯がゆかったが、致し方ないと、諦める。
自室に戻って紙と筆を行李から出す。
男子三人で一枚、蝶屋敷の皆に一枚、手紙を書くことにした。
誰かに一枚とかにすると良くないかな、と思ったからだ。
嬉しそうに、サラサラと書いていく。
しかし、ふと筆を止めて、「会いたいなぁ……」と呟く。寂しい気持ちを押し込めるように鍛錬に明け暮れた。でも、それが取り上げられてしまった途端に、溢れんばかりに込み上げる。
「だから、休みたくなかったんだよ……くそ…」
筆をぐっと握りしめる。
下腹部がズキズキと痛み始める。寂しさと痛みでその場でうずくまる。
「あらあら、光希ちゃん、大丈夫?」
様子を見に来た千代が入ってきた。
「千代さん……だいじょぶ、です」
「もう!布団に入りなさい!手紙は後!!」
光希の身体を支え、布団に移動する。
「すみません……」
「いいのよ。女の子は仕方ない。私も痛い方だから、わかるわ」
そう言って、光希を横向きに寝かせ、優しく腰をさする。痛みが和らぐ気がする。
「ご迷惑を、おかけして……」
「あーもー、そういうのはいいの。私はここでは貴女のお母さんよ」
「お母さん……」
「冨岡さんにくれぐれも頼むって言われてるし」
「……俺は母親を覚えていないから、わからないんです」
光希が静かにそう言った。