第7章 冨岡邸
光希が冨岡邸に来てから二週間以上経った。
義勇は仕事で居ないこともあるが、居るときは稽古を付けていた。
寝る間も惜しんで鍛練する光希。義勇がいない時もひっきりなしにやっているようで、千代が心配して義勇に相談する程だった。
―――こいつ、このままだと死ぬな
そう焦り始めた義勇だったが、その日の鍛練が終わろうとする時、光希が突然ガクッと片膝をついた。
「どうした」
「いえ。はぁ、はぁ、はぁ…ぐっ……」
「おい」
「だ、大丈夫、です」
明らかに様子がおかしい。
「あの、義勇さん…明日から、……休みを、いただけませんか?」
ふぅ、と大きく息を吐き、立ち上がる光希。手は腹に添えられている。
状況を察した義勇。
「わかった。三日でいいか」
「二日、いただければ」
「……三日だ。激しい鍛錬は禁止する」
「はい」
「今日はここまで。あがれ。掃除も不要だ」
そう言って義勇は光希の木刀を取り、片付ける。
「や、でも、今日はまだ、」
「あがれ」
「……ありがとう、ございました」
光希はペコリと頭を下げ、とぼとぼと稽古場を出る。
自室に戻った光希。
まだ出血は確認出来なかったが、この痛みからして明日の朝には生理が始まるだろう。
義勇は、面倒くさいと思っただろうか。
女子を受け入れたことを後悔しているだろうか。
腕もまだまだ未熟なのに、こんなことで休むなんて、と呆れられただろうか。
悔しさで涙が滲む。
そこへ「入るぞ」と声がかかる。
慌てて涙を拭き「はい」と答える。
「飯だ」
「え、はい」
いつもは千代が呼びに来るのに、何故?と思う。
義勇の部屋で食事を取る。
自分の膳をじっと見る光希。いつもよりおかずがやや多い。
「義勇さん……」
「食え」
「……はい」
「血を作れ」
「うぅ……」
「明日から俺は任務だ」
「はい」
「しっかり休め」
「はい」
「何かあったら千代に頼め」
「はい」
「俺には、……よくわからないからな」
義勇が光希の身体を気遣ってくれているのがわかった。部屋に様子を見に来たのも、おかずが多いのも、全部。
「……はい。ありがとうございます、義勇さん」
光希は夕餉を頑張って完食した。