第56章 探しもの
二人は書斎の本を漁っていく。
背の高い義勇が上の段から、光希は下の段からどんどん確認していく。
「隠されているのかもしれない。挟まれた紙や不自然な落丁があったら気を付けてください」
「わかった」
しばらく二人で本を見ていく。
本をめくる音と、二人の動く音のみが部屋に響く。
「おい、これ……!」
義勇が声を上げたので見に行くと、その本の背表紙には見覚えのある模様が書かれていた。
「炭治郎の耳飾り……!」
「ああ」
義勇は光希に本を渡し、二人で本を読む。
が、光希の本を読む速度が速すぎて義勇は全く読めない。一頁を二秒くらいのスピードでめくっていく。
仕方ないので諦めて一度離れる。
他にそれらしい本が無いかまた調べ始める。
少しするとパタンと本が閉じられる。
義勇が振り返ると、口元に手を当てて考え込む光希。もう読み終わり、思考に入っているようだ。
……俺の存在を完全に忘れているな
光希の速読っぷりに驚きながら、少しの寂しさを覚える義勇。
「……おい。内容は」
声をかけると、はっと我に帰る光希。
「あ、はい。すみません」
光希は本に書かれていたことを、掻い摘んで義勇に話す。
竈門家と如月家はやはり昔から繋がっていた。
日の呼吸を託された竈門炭吉の妻すやこが如月の遠縁、以来ずっと如月家は竈門家に寄り添って血を繋げ続けていた。
「『如月の者は、竈門の者が闇に堕ちし時、彼の地より連れ戻せる。竈門の者と対をなし、ヒノカミ様を守れ。その日が来るまで深き血縁を途切れさせることなきよう』……で締められています」
「竈門家のヒノカミ神楽、つまり日の呼吸を共に守ってきたということか」
「……みたいですね」
「闇に堕ちし時……鬼になったらということか」
「おそらく。もしそうなら俺は、禰豆子を元に戻す何かを持っているのかもしれない。でもそれがわからない」
「書いてないのか」
「具体的な方法は、何も。鬼に見付かることを恐れていたのかもしれない」
光希はまた、ぱらぱらと本をめくる。