第56章 探しもの
翌朝、義勇が光希の部屋に来た。
「おはようございます、義勇さん。今日はよろしくお願いします」
「ああ」
「家まで走って行ってもいいですか?身体が鈍ってしまってて」
「構わない」
屋敷を出ると光希が駆け出す。
義勇は光希の後を付いていく。
……速くなったな
義勇は走りながら、以前の彼女を思い出す。
自分の後を一生懸命付いてきていた光希。
がむしゃらに鍛錬をしていた光希。
自分の弱さに、いつも悔しそうに歯を食いしばっていた光希……
あの時の彼女はもういない。
今はこんなに速い速度で自分の前を走っている。彼女の成長を実感する。
心に込み上げてくるものがあり、珍しくじーんとしているところへ光希の声。
「……あれ?どこだっけ?」
義勇はピクッと片眉を上げる。
光希は足を止めて、地図を片手に焦りながらキョロキョロしている。
……こいつ
光希の手から地図を取り上げて見る。
「こっちだ」
「……すみません。前のときは、家から行ったので」
「全く、お前は……」
「へへへ」
「まだまだ、だな」
義勇は光希の前に立って歩く。
まだまだ可愛い弟子のままでいてほしい。
そんなことを思いながら。