第55章 軍事指南
「すみません、遅れました」
光希が会議室へ入る。
皆の視線が向く。
悲鳴嶼以外の者がはっとする。
「光希ちゃん……、それが……、」
「へぇ、赤い釦なんだね」
「お披露目ってかァ?」
柱たちは光希の姿に声をあげる。
光希は総司令官専用の隊服を着て現れた。
柱とも違う仕様の服。胸ポケットが左右にあり、血のように赤い色の釦が付いていた。
「……、そうか。やっと着たのか」
「はい。全員で集まる柱合会議はしばらくないと思いますので。今後は個別になるかと思います」
光希はそう言うと、義勇の隣を開けてもらって円座の中に座る。いつもこの位置だ。
「光……?」
「ああ、文字ですか?選べるって言われたから」
義勇が、光希の背中を覗き込む。
何のことかと皆が目線を向けてくるので、光希は身体を反転させて背中を見せる。
「何故、『光』だ」
「皆が背負うのは『滅』……。俺が背負うのは、そんな皆の命です。だから、俺は希望を背負ってみました。皆がギリギリまで頑張れるような光になりたくて。……格好いいでしょ?まあどうせ羽織着てるから見えないんだけど」
「いいですね、光希さんらしいです。希望の光、ですね」
「はい。……本当は『笑』にしたかったのですが」
「私が止めた」
「常に笑顔を絶やさずに、ってしたかっただけですよ?ふざけた訳じゃないのに」
「どうだかな」
「テメェはいっつもふざけてるからなぁ」
「ここでは至極真面目ですよ?これでふざけてるなら普段の俺はどうかしてることになります」
光希が笑い、皆もクスクスと笑う。
「さて、ここまでの話は後から悲鳴嶼さんに聞きます。遅刻野郎の俺は少し黙ってるので、再開してください。どうぞ」
光希がそう言って、会議が再開される。
皆が話し始めると、じっと内容を聞き、今どこまで話されているのか、どんな事になっているのかを説明のない中で理解していく。