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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第55章 軍事指南


輝利哉に少しだけ笑みが戻る。

「あと、もうひとつ。……これは俺の予想だけど」
「?」
「耀哉様は、輝利哉様をどうしても死なせたくないんだ。自分の命で開戦し、それを繋いでもらい、想いを託して必ず無惨を討つ。そして絶対に、あなたの代で産屋敷家にかかった呪いを解きたいんだと思う。あなたが自分のように死んでしまわないように」
「私の……ために」
「そうだ。……それが何故か、わかるな?」

輝利哉の目から再び涙が溢れる。


「父上は、私の事を、……愛しているから」

「そうだ。この策はお父上から自分への愛だと思え」


「私は父上から、……死と引き換えに愛をもらうのか」
「そう。一回きりで、お代りできないからな。ちゃんともらえよ」
「……ち、父上は…私に厳しくて、仕事ばかりで……私はあまり、構ってもらえなかった」
「うん」
「もっと……もっと甘えたかったのに、させてもらえなかった。ずっと我慢してきた」
「そっか」
「でも、そうか。……私はこんなに大きな愛をもらえるんだな」
「そうだよ。良かったなぁ」
「へへ……」

輝利哉は笑いながら泣いた。


「悲鳴嶼さん、先に柱合会議に行ってください。俺抜きで、柱稽古の進捗状況を話し合っといてください」
「わかった」

「光希、私はもう大丈夫だから、会議に……」
「俺が今優先すべきは、こっち」

光希は腕の中の輝利哉に笑いかける。
悲鳴嶼が部屋から出ていく。


「さあ、二人になったぞ。遠慮せずに不安なこととか、全部俺に話せ」
「全部……」
「お父上との思い出とか、何でもいいぞ。……また俺にキレてもいい」
「……謝ったのに…根に持ってる……」
「あはは。何でもいいんだ。吐き出せ。涙と一緒にな。そしたら覚悟ができる」
「覚悟は、した」
「いや、まだだ。まだ断然甘い。俺だって覚悟するのに相当かかったんだ。こんなに早く覚悟出来るわけないだろう」

笑いながら輝利哉の背をぽんぽんと叩く。

「何日かかってもいいよ。ゆっくりな。そして、覚悟したら、受け入れて、その時をちゃんと見届けるんだ」
「うん」
「子に見送られる親も幸せだし、親を見送れるのも羨ましいな。……俺は出来なかったから。早くに親と死別したり、捨てられた子は、どんなに願っても叶わないんだ」
「……私は幸せなのか」
「そうだよ」

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