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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第54章 協同逢瀬作戦3


光希は初恋の少年を思い出す。


『めっちゃん、大好きだよ』
『ふふ、光希も、炭治郎ちゃん大好き』

炭治郎が光希の唇に自分の唇を重ねる。
子どもらしい可愛い口付け。
口を離すと、炭治郎はにっこりと笑った。

『……今の、なあに?』
『あのね、大好きな人にはこうやるんだ。お口とお口をちゅって合わせてね、好きだよって伝えるの』
『ふうん。くすぐったいね。えへへ』
『めっちゃんは俺のお嫁さんになるんだよ』
『うん!』
『だってめっちゃんは俺の―――だから!』


あれ? 俺の……何だっけ。
思い出せずに首を傾げる光希。



初恋の人に恋人が出来た。

やはりほんの少し……ほんの少しだけ、寂しさがつのる。でも、このちくちくした胸の痛みは、すぐに消えるものだとわかってる。

だって自分にも、こんなに愛する人がいる。


「……、なんだよ、じっと見て」
「男前だなと思って」
「今更気付いたのかよ」
「ううん、もっとずっと前」
「へえ」


「善逸、大好きだよ」

「……馬鹿。今日は我慢の日なんだから、あんまり煽んな。今の口付けで俺はだいぶやべえぞ」
「ふふふ。だって、好きなんだもん」
「髪の毛くるくるでそんな可愛いこと言われたら暴走するからね俺」
「え? 髪型ってそんなに効力ある?」
「あるある!!」

「善逸は新鮮なものによく反応するよね。浮気がちな人間の心理だね」
「あー……、やっぱりいつもの真っ直ぐな髪がいいかも。うん」
「あはは、もう遅いよ!」
「どんな光希でも可愛くてたまらないってこと!」


二人は笑いながら居間へ歩く。



………炭治郎ちゃん、良かったね。私は炭治郎ちゃんのお嫁さんにはなれなかったけど、凄く素敵な子が君を愛してくれたよ。
私にもね、凄く凄く好きな人が出来て、ちゃんとそばにいてくれてるよ。だからお互い、その相手を一生懸命愛そうね。
この命のある限り……



光希の記憶の中の小さな炭治郎が、満面の笑みを浮かべた。


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