第54章 協同逢瀬作戦3
善逸がお茶を持って部屋に行くと、部屋着に着替えた光希が考え込んでいた。
「光希、お茶ね」
「……、………」
「ここに置いとくよ」
………聞こえてないな
完全に思考に徹している。
口元に手をあてて、目だけがたまに動く。おそらく脳内で描いている状況を見ているのだろう。
「……よし。………ん?」
小さく呟いた時、初めて湯気を立てるお茶に気が付いた。
「……あ。ごめん、善逸。お茶ありがとう」
「いや…。完全に入り込んでたな」
「無意識に入っちゃってたね。ん、お茶美味しい」
光希はお茶を一口飲み、紙にさらさらと文字を書いていく。
「めんどくさい仕事なのか?」
「んー、ちょっとね。でも、半分いけた」
「え?もう、半分終わったの?」
「ほぼ、ね。えっと……ちょっと待て。こっちを先にもってくるとよりいいな。……よし」
カリカリと鉛筆を走らせる。
「これで……、どうだ?…………、よし……、よし……、………よし!いけた、かな。うん!」
指と鉛筆で確認していく。
いくつかの名前や数字を丸で囲む。
ふぅー…と畳にころんとひっくり返って天井を見る。
額の上で両手を組む。
「今夜、戻らなくてよさそう?」
「………あと半分」
「ちょっと休憩するか?」
「……うん」
光希が寝転んだまま善逸に両手を伸ばす。
善逸は光希に近付いて隣に座り、嬉しそうにその手を取る。