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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第54章 協同逢瀬作戦3


「ただいまー」

帰宅するとすぐに、光希は玄関でなでしこの花を紙でくるんで花束にする。

「これ、カナヲにあげよう」
「そうだな」

作戦を決めたとき、苗を探しまくった光希。季節が違うので手に入れるのに苦労したが、なでしこもその頑張りに応えるように咲いてくれた。


「花言葉……なんだっけ?」
「あはは、善逸聞いても忘れるじゃん。興味ないくせに」

光希が笑いながら花束のまま浅めに花瓶に花を挿すと、善逸が後ろから抱きしめてきた。


「……純潔」
「残念、純愛でした」
「おお、いい線いってたじゃん」
「おしかったね」

なでしこを見ながらクスクス笑う二人。


「賭けは、この花束渡すときは含まれねえぞ」
「もちろん。ここへ二人が帰ってくるまでの間だからね」


光希と善逸は賭けをしていた。

炭治郎とカナヲが今日の逢瀬で口付けまで進めるかということを。

二人が賭けたのはどちらも「進めない」だった。しかし、それでは賭けにならないので、仕方なく光希が「進む」に変えた。


「絶対に俺の勝ちだろ」
「……いや、可能性がないわけじゃない」
「本当に思ってる?」
「思ってるよ。極めて低いけどね」
「あっははは!だろ?」
「いや、炭治郎は激情型だ。行動を起こすかもしれない」
「あり得ねえ」
「……だよね」

「光希が勝ち目のない賭けに乗るとは、珍しいな」
「あはは、そういう時もある。私の希望が入ってる。カナヲはきっとして欲しいだろうから。炭治郎には頑張って欲しいところだけど……まあ、ないな」


炭治郎に対して、失礼発言の応酬である。


「……でも私は炭治郎を信じるよ。あいつは、やる時はやる男だ!カナヲが了承の意を示せば必ず動く。賭けるだけの価値は十分にある」
「へえ、俺は勝利を確信してっけどな」
「……ぐぅ…、炭治郎を舐めるな!いける!」
「さあ、何をお願いしよっかなー」

勝者への報酬は、勝った方が相手にひとつお願いを聞いてもらえるというものだった。


「あはは、私も考えとかなきゃ」

光希は家に上がる。
疲れたのか、ふぅと一息つく。

「ちょっと部屋に居るね」
「お茶持ってってあげる」
「ありがとう」

光希は部屋に入っていく。


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