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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第53章 協同逢瀬作戦2


「……あーくそ、なんで泣いてんだ、俺。めでたいことなのに」
「知るかよ。言葉酷いぞ」
「はぁ…疲れた。ちょっと待ってくれ」
「はいはい、お疲れ様」



「ふぅー……よし、これで……」


目から手拭いを離して、涙目で空を見つめる光希。



――――これで、思い残すことは何もない




「………これで、何?」

「これで、新しい手拭いが手に入る。やったね」
「……泣きながら策略ひねるのやめろよ。怖いんだけど」
「あはは、どんな柄を買ってくるか楽しみだなぁ。二人で買い物ってのは良いね、うん。たっぷり愛を深めてこい」

そう言って光希は笑う。
またはぐらかされた。



「協同逢瀬作戦、これにて任務終了ー!!見事な大勝利です!!!」

光希が目を赤くしたまま、腕を上げて伸びをする。もう笑顔になっている。


「いいか。お前はまだ、やることあんだぜ」
「ん?」
「お前がくっつけたんだからな。責任もって、炭治郎とカナヲちゃんの祝言に参列しなきゃ。平和になった世界で」
「くっついたのは二人の意思だもん。私は関係ありません」
「関係あるよ!……俺も参列する」
「………うるさいからっつって呼ばれなかったりして」
「んなことねえよ!ひでえなそれ!……伊之助も一緒に行くんだ。あいつ礼儀とかわかんねえからさあ、お前が…ちゃんとそばにいて見といてやってよ」
「なんで私が。私は泣いちゃうだろうから、自分の世話でいっぱいいっぱいだよ。伊之助の面倒は善逸が見るの」
「不死川も呼んでさあ…同期皆と、蝶屋敷の人たちとで…、……盛大に二人を祝うんだ。……お前は、……俺の隣で、泣いてりゃいい。必ず…俺の、隣に居て……」

光希が手拭いを善逸に渡す。
善逸は手拭いを受け取り、不覚にもこぼしてしまった涙を拭く。

「やっぱ泣くじゃん」
「……うるせ」
「またまだ手拭いは要るなあ」
「………約束してよ。二人の祝言の時、俺の隣席は光希だよ」
「…………」
「約束!」
「わかった」
「約束したぞ?忘れんなよ!!」
「わかった。忘れない」


善逸は光希をぎゅっと抱きしめる。

彼女がどこへも行けないように、そのぬくもりを守るようにしっかりと自分の胸に閉じ込めた。


今出来る、彼女の死支度が完了した。

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