第52章 協同逢瀬作戦
洗濯をしながら炭治郎が話す。
「光希はさ、善逸と二人だと女の子なんだな」
「そうだよー」
「びっくりした」
「あはは。初めの方はなかなか出来なかったけど、慣れたよ。まあ今でも言葉が戻っちゃうこともあるけどね」
「へえ。女言葉使いたくないんだと思ってた」
「うん、女言葉は苦手だけど……善逸が喜ぶから。やっぱり好きな人が喜ぶことはしてあげたいじゃん?」
「そうだな」
「恋愛は、どっちの頑張りも必要なんだと私は思う。辛くならない程度にね」
「うん。そうだな」
炭治郎も頷いてにこやかに笑う。
「光希が私っていうの、新鮮だな」
「ここに来ないと聞けないよ」
「貴重だな」
「よかったねー、炭治郎ちゃん」
「……それ、善逸が聞いてたら妬くぞ」
「え、絶対に聞いてるよ。私と炭治郎が二人でいるなんて善逸は絶対に嫌なはずだから」
「よくわかってんじゃねえか、光希」
スパン、と縁側に続く戸が開く。
「あはは、ほらね?」
善逸は光希の隣に座って乱暴に髪を拭く。
炭治郎がそんな善逸を見て笑う。
「光希、風呂入ってこいよ。炭治郎ちゃんのおもてなしは俺が代わるから」
「はーい、じゃあお風呂行ってくるね」
今度は光希が善逸の頬にちゅっと口付けをして、ご機嫌で風呂に向かう。
気まずい雰囲気になる男子たち。
「………善逸たち、いつもこんな感じなのか?」
「…ま、まあな」
「どこから計算なのか、わからないな」
「……ほとんど全部だと思え。流石に俺たちも普段ここまでひっきりなしにいちゃついてねえよ。あいつの指示だ」
「そんなこと言っちゃっていいのか?計略なのに」
「いいだろ。どうせそれも予測内だよ。俺も全部わかってるわけじゃねえし」
「全ては俺とカナヲのため、か」
「いやあいつ自身の為だよ」
「え?」
善逸はタライの中に手を入れて、洗濯を手伝い始める。手速く足袋についた泥を落としていく。
「あいつは、お前のこともカナヲちゃんのことも本当に大好きで心から大切に想ってる。力になりたいと強く願ってる。だからなんとかしようとしてる。自分のためにやってるだけだから気にすんな」
「そうか」
「お節介なことだが、やらせてやってくれ」
話しながら、あっという間に炭治郎の足袋が綺麗に洗われた。