第52章 協同逢瀬作戦
家が見えてくる。
音で気づいたのだろう、部屋着の善逸が出迎える。
「炭治郎、ようこそ」
「へへ、炭治郎がこの家のお客様第一号!善逸と、前から話してたんだ。第一号は俺達二人にとって大切な人にしようって」
光希と善逸は嬉しそうに炭治郎を出迎える。
その笑顔と暖かさに目が潤んだ。
入って、と言われて「お邪魔します」と玄関をくぐる。
「話には聞いていたけど、大きい家だな」
「だろ?冨岡さん凄すぎでしょ」
驚く炭治郎は玄関をきょろきょろと見回す。
隙をついて光希がちらりと善逸に目配せをした。
すると善逸が炭治郎の隣で草履を脱いでいる光希を、後ろからぎゅっと抱きしめる。
「おかえり、光希。会いたくて堪らなかったよ」
ぎょっとする炭治郎。
「え……」
「ただいま、善逸。私も会いたかったよ」
二人は玄関でちゅっと口付けをする。
「は……?」
ぽかんとする炭治郎。
俺は何を見せられてるんだ?
え、俺、お邪魔なのでは?
「お邪魔します」って本当にその通りってことか?
「何?炭治郎、どうかした?」
「や……、びっくりして」
「ん?何をだ?」
「何って……いや、何でもない」
……そうか、恋人同士って普通に口付けとかするんだ。別に何も不思議じゃないんだ。
二人は進んでるんだなぁ。いいなぁ、幸せそうだなぁ、いいなぁ……
光希と善逸は並んで廊下を歩く。
「……おい、死ぬ程恥ずかしいんだが」
「いやこのくらいやんないとあいつは駄目だ。恥ずかしいのは俺もだよっ!我慢しろ!見取り稽古をさせるんだ!」
二人は小声で話す。
「羨ましがってる音するか?」
「うん、凄く」
「よし、上出来だ。こっからもっと上げてくぞ」
光希はにやりと笑う。
炭治郎の知らないところで、もう作戦は始まっているのだ。
炭治郎は玄関のなでしこを見つめた。