第51章 休日3
「素晴らしく美味しい……」
善逸のご飯を一口食べて顔を綻ばせる光希。
「久しぶりだもんね、善逸の手料理。なんかすっごい美味しいよ。ありがとう」
「そう?そりゃどうも」
「むこうではさ、なんか高級な感じの物しか出ないのよ」
「……庶民的だからね、俺のは」
「この食べ慣れた感じ、最高!」
「えーと、喜んでいいんだよね?俺」
「もっちろん!」
二人で楽しく食事をする。
片付けも善逸にやってもらい、申し訳なく思う。
「ポンコツでごめん……」
「いいんだよ。光希がポンコツなら俺は粗大ごみだ」
「いや、そこまで卑下しなくても」
「はは、ゆっくりしてて。はい、お茶」
「ありがとう」
お茶を飲みながらふんにゃりとしていた光希の気配が、突如としてピリッと変わる。
「……鴉?」
ゆっくり立ち上がって、台所の勝手口から外用の下駄を履いて庭へ出る。
善逸が眉を寄せる。
光希は裏庭で鴉と話をして、考え込んでいる。
………休みなのに
善逸は洗い物を終えて、自分のお茶を入れて座る。
台所に戻ってきた光希は難しい顔をしていた。
「………仕事?」
「うん、まあ」
「今から行くの?」
「まさか。今日は休むよ、……てか無理だし」
「うん」
光希はお茶を飲む。
善逸もお茶を飲む。
しばし無言になる。
「報告だから。呼び出されたわけじゃないよ」
「そっか」
「今日は善逸と過ごすの。えへへ」
「うん。ありがとう」
「こちらこそ、ご飯も洗い物もありがとう」
にこりと光希は笑いかけ、善逸も少しほっとする。
「……お前ってさ、絶対に『ありがとう』って言うよな。ちょっとしたことでも」
「え?そんなの当たり前でしょ?」
「そうだけど。なかなか出来ない人もいるじゃん?」
「まあ、そうかもね」
「『ごめんなさい』もちゃんと言うしな」
「自分が悪いと思ったらね」
「なんかお前のそういうところ、尊敬するわ」
善逸が照れくさそうに笑う。
「私も、そういう『人のちょっとした良い所』を見つけられる善逸を、尊敬してるよ」
光希も照れたように笑う。
「……なんだこれ、恥ずっ」
「本当だよ」
二人は照れを隠すようにお茶をすすった。