第50章 休日2※
善逸は青ざめる。
何故これを予測出来なかった。
同衾の回数を重ねたが故の、気の緩みだ。
油断したのは、……俺だ。
「光希、ごめん。ごめんね」
「ううっ…、はぁっ、はっ、……ふっ、」
少し遠い位置から呼びかける。
光希はまだ震えている。
「光希……本当にごめん」
「………怖い……怖いよお…、うぇっ…」
「うん、怖かったね」
「……っ、…ううっ…ばか。善逸のばかぁ」
「うん。馬鹿だね」
善逸は光希を落ち着かせるために、そっと近寄る。
「光希、触ってもいい?」
「………」
「……あのね、さっきの正解だよ。宇髄さんに光希を抱き潰して休ませろって言われた。でね、俺なりに考えて、作戦たてたの」
「………」
「うまくいったと思ったんだけどね。俺も酔ってるから、……失敗しました」
「………」
「やっぱり、計略とか向いてねえな、俺は」
善逸はうなだれる。
その善逸らしい弱々しい声に、光希の恐怖も解けてくる。
「……いいや」
光希がむくりと身体を起こす。善逸には背を向けたまま、着物を両手でしっかりと押さえている。
「見事な策だった。俺がこうも完全に騙されることはそんなにない」
「光希……」
「俺を……抱き潰そうと思ったのは、指示されたから…だけか?」
「え?」
「俺を抱き潰して頭と身体を休ませる……。それだけのため?」
「いや……違うよ。指示された…なんてのは言い訳だ」
善逸は後ろから光希をそっと抱きしめる。
「光希を愛してるから、だよ」
光希の音を注意深く聞きながら、抱きしめる腕の力を少し強める。
「光希のことが好きで好きでどうしようもないから、抱きたいの。めちゃくちゃにしたい。抱き潰して、俺のものだってしたい。好きだから。本当ただそれだけ」
善逸の頬を、光希が流した涙が濡らす。
「泣かせてごめん。怖がらせて……ごめん」
「俺も……怖がってごめん。傷付くよな。……弱くてごめんな」
光希は自分にしがみついている善逸の腕に、自分の手を重ねて「これは、善逸なんだ。大丈夫大丈夫。善逸だ」と繰り返す。