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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第48章 柱稽古


「お前、あん時まだ逃げれたろ」
「ん?落とし穴の中でか?」
「そう」
「いや…どうかな」
「お前の目は諦めてなかった」
「まあな」

光希は少し前の自分の状況を思い出す。


「そんな中、諦めたのは何故だ」


「勝たせることで、隊士たちに成功体験をさせたかった」
「それと?」

「怪我をしたかもしれない善逸を、置いていきたくなかった」
「それと?」

「………あの時、天元さんが指揮を取っていた。穴を覗き込むあんたと目があって、勝率は限りなく低いと思った」
「……だよな」
「取引や交渉で長引かせて時間を稼ぐことも出来たと思う。が、あんたがいる以上小細工の類は困難だ」
「俺への評価がやたらと高いな」
「ああ。信頼してっからな」

「なら、そんな俺の言うことなら聞いてくれるだろ?」
「……わかったよ、明日は休む」
「そうしろ」
「…半日だけ」
「おい!」

ははは、と笑って光希は立つ。

「なら、今日はまだまだ鍛錬しなきゃな!」
「わかってんだか、わかってないんだか……午前中に倒れたの忘れちまったのか?」


「………動いてないと、身体が震えるんです。芯から震えが来るんです。情けないですね、本当」
「光希……」
「怖いんです、凄く」

握り拳に力を込める光希。

「光希、鍛錬してこい 」
「はい」
「強くなれば、震えが止まる」
「はい」

「倒れたら、俺が介抱してやる」
「ありがとうございます、宇髄さん」


光希は、宇髄を見ないままに外へ駆けていく。


言葉が以前のものに戻っていた。

まだ重荷を背負う前の、ただがむしゃらに走っていればよかったころの自分を持ち出して、少しだけ寄りかかってみせたのかもしれない。

……不器用な甘え方しやがって



外へ走っていった光希は、もう相手を見付けて手合わせをしている。

楽しそうに木刀を振るう少女の姿にはもう、今見たような弱々しさはなかった。


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