第48章 柱稽古
「ごめん、……俺が落とし穴に落ちたから…うわあああん…、気をつけてたのに、あと…ちょっとだったのに……ちくしょう…ううっ……」
ぜぃぜぃと息を切らしながら号泣する善逸に、光希含めて同期は皆、少し引いている。
……え、そんなに泣く?鍛錬なのに?
「おい、善逸…泣くなよ。怒ってねえよ」
「光希の言うとおり降ろしていればよかったんだ。俺の判断のせいで、光希を殺したんだあああ」
「殺し…、うん、まあそうだけどな」
「ごめん、ごめんねぇ、うあああん……!」
光希を、守れなかった。
最後まで、守りたかった。
その悔しさで、善逸は泣いた。
「しゃあねえな……」
光希は困った顔で、善逸の側に座る。
優しく背中をさする。
「あのな。これは鍛錬だ。失敗してもいいんだよ。ってか、失敗した方がいいんだ。お前はこの失敗から次に繋げればいい。泣かなくていいんだよ」
そして、小さな声で囁く。
「それに、元々負けるつもりだったし」
「え?」
「皆に成功体験をさせて、達成感を味わってもらいたかったんだよ。いい感じで負けれて逆に良かった」
「せ、性行体験…?は?お前何のつもりだ!あいつらに何させるつもりだったんだよっ!」
勘違いした善逸が、疲れ切った体で無駄にいきり立つ。
「……多分お前のそれ、字が違う。そっちじゃねえよこの馬鹿!」
光希が眉をひそめて善逸の頭をバシッと殴る。
「まあとにかく、お疲れ様。ありがとうな皆。負けたけど、いい試合だったと思うぜ」
伊之助と玄弥に笑いかけて、四人で拳を突き合わせた。
そんな四人の様子を、
……いいなぁ、あいつら
と、遠巻きにしていた隊士たちが羨望の眼差しで見ていた。