第48章 柱稽古
光希を抱えて善逸が走る。
宇髄がすぐに追手を放つ。
「雷の隊士を中心に、左右に別れて追いかけろ!絶対に逃がすな!」
「はい!」
呆気にとられていた隊士たちが走り出す。
隊士たちもかなり疲弊しているが、頑張って追いかける。
「石を投げろ!足を狙え!動きを止めろ!」
宇髄が楽しそうに指揮を取り始める。
「降参は勝利条件じゃねえ!騙されんな!確実に如月の布を奪え!!ほらほら走れ!逃げられるぞ!!」
宇髄は隊士たちを煽って、光希たちを追いかけさせる。
「善逸、降ろせ!俺も走る!」
「駄目だ……!捕まってろ!」
「二人で走った方が速い!降ろせ!足を痛めるぞ!」
「ギリギリまで俺が走るっ!俺が倒れたら……そこから走れ!はぁ、はぁ……」
「善逸……」
「俺が、お前を守るっ……!」
善逸は嬉しかった。
『俺を守ってくれ』
作戦とはいえ、光希が初めて自分に守ってくれと口にした。
たまらなく嬉しかった。
自分には、この子を守る力も資格もあるのだと思った。その為ならこんな命、いくらでも投げ出せると思った。
手足が引きちぎれそうなくらいに痛い。ただの鍛錬だと頭ではわかってる。
それでも、歯を食いしばって走る。
投げられる石を、必死に躱しながら走る。
凄い集中力だ。
「よし、このまま、時間まで……」
そう言った瞬間、善逸の足の下に地面がなくなった。
「はっ?」
善逸が空中で間抜けな声を出す。
「えっ!」
光希も突然の浮遊感に素っ頓狂な声を出す。
「ぎゃあああああーー!!」
二人は落とし穴に消えていった。
宇髄をはじめ、そこにいた隊士がぽかんとした。
先程まで盛大に格好つけていた善逸の、まさかの自爆。
……あんの馬鹿
宇髄は頭を抱えた。