第48章 柱稽古
山の中、善逸は一人で逃げ回っていた。
「そっちいったぞ!」「囲めっ!」「速いぞ!」追いかけてくる隊士達の声が飛び交う。
……くそっ、数が多いっ
投げられる石粒を刀で弾く。
『いいか善逸、前半戦、お前は走れ。戦わなくていい、ひたすら走れ。お前が逃げきれば、三人が捕まることでの敗北がなくなる』
「はぁはぁ、この先に……」
『天元さんにもらった、今日の罠の位置だ。頭に叩き込め。これを利用しろ。お前がかかるんじゃねえぞ』
「網が……はぁっ、はぁ、」
善逸が走り抜けた後に、追いかけてきた隊士たちが、ザザザと大きな網にすくい取られる。
「うわっ!くそっ……」
「この網切れねえ!」
「落ち着け、とにかくここから出るんだ!」
「はぁ、はぁ、よしっ」
網の中でうごめく隊士たち見て、善逸はまた山の中を走り出す。
『お前が、一番速い。頑張って逃げろ』
今度は追手を落とし穴に誘い込んで落とした。
「……よしっ、はぁ…はぁ……うわ、きっついなちくしょう!」
こぼれ落ちる汗を拭いて、一人で風のように山を走り回る。派手に動いて相手を誘い、どんどん罠にはめていく。
『罠にかければ人数を減らせる。それを助ける為にまた人数が削られるしな。とにかく走って逃げて、人数を減らしてくれ』
……ちっ、もう次がきた。この辺に罠はもうない。東へ抜けないと
後ろを追いかけてくる隊士たちを音で確認する。
『直線での追いかけっこなら、お前は絶対に捕まらない!走れ!駆け抜けろ!』
「霹靂一閃!」
善逸は光とともに走り去り、追手を置き去りにした。