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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第48章 柱稽古


「よお。伊之助」
「おお、起きたのか。お前、総…なんとかってのになったんだな」
「ん?まあな。別になんてことねえよ」
「ふうん」
「伊之助、これ半分こしようぜ」
「お前、一つ食えないのかよ」
「でかいよ、このおにぎり」
「そうか?十個はいけるぜ」
「流石だな。ほい、半分頼んだ」

光希は半分のおにぎりをゆっくり食べる。
伊之助はまだまだ元気そうで、俺は二十走った!と笑っていた。

二人で食べていると善逸が来た。
彼の走り終わりは早かったので、どこかで休んでいたのだろう。


「善逸、お疲れさん」
「お前大丈夫なのかよ。無茶しやがって」
「大丈夫。復活したよ。最後の一周は記憶ねえわ。あはは」

善逸は顔を引つらせる。


「紋壱、食えよ」
「善逸だよ、俺は。……じゃあ一個だけ。うわ、腕だるっ」

「お前さ、俺に合わせて走らなくても良かったのに。十五周で最後あの速さはそれこそ無茶だ」
「お前が走ってんのに、合わせないわけにいかないだろ」
「別に。俺とお前は走る目的が違うんだから。
お前は自分の為に走ればいい」


光希は士気を上げるために走っている。
己が率先してギリギリまで頑張ることで、『死ぬ気で鍛錬せよ』と手本を示している。


「……いや、俺はそれでも光希と一緒に走るよ。お前の横を走っていたい。ずっとな」


周りに聞こえないように、小さな声で善逸がそう言った。


「要求される周数が違うから、一緒もなにもないだろ……」

そう言いながら、少し嬉しそうにする光希。


「おい、伊之助、そんなに食って大丈夫か?午後からまた走るんだろ?」
「食わねえと走れねえよ。まだ食うぜ!」
「ははは、凄いな、ほんと」

照れ隠しのように、伊之助を見て光希は笑った。


「あ、玄弥!」

光希は玄弥を見付けて走り去っていく。

一人で離れて座っている玄弥の隣に言って話しかけてる。いつも不機嫌そうな玄弥が、笑いながら光希と話す。

すぐに人が集まってきて輪ができる。


これこそが光希の最大の強みなのではないかと善逸は思う。人の心を掌握するのがとてつもなく巧い。


……凄えな。本当


善逸は身体にのしかかる疲れを感じながら、輪の中で笑う光希を見ていた。


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