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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第48章 柱稽古


「これから、戦いが始まるまでの毎日、泣いてもいいです。辛い時は、我慢しなくていいんですよ」

「……っ、」
「戦いが始まったら泣いてはいけません。涙を流すと前が見えなくなり、思考も鈍ります。
だからこそ、その前に泣ききってしまいなさい」
「……うっ、…ふっ…」

輝利哉の目から涙がぼろぼろと溢れる。
光希は握っていた手を離し、代わりに手拭を渡してやる。

隣に寄り添い、背中をそっと擦る。


「お父上が初手を打ってくださいます。あなたはそれを繋いでください。俺も必ず側にいますから」
「……うううっ…、くっ、」
「あなたはまだ子どもです。心の均衡を保つためにも、泣くことは必要です」
「うぅ…うわぁぁん、父上ぇ……」
「よしよし、いい子ですね」

輝利哉は声を上げて泣いた。彼の小さな身体では抱えきれない責任と不安が、涙となって出てくる。
それを光希と手拭いが受け止めていった。



「……すまない」

落ち着くと、輝利哉が照れくさそうに言った。


「俺が許可したのです。お気になさらず」
「……はあ、久しぶりに泣いた」
「そうですか」
「迷惑をかけたな」
「いえ。俺はとんでもない泣き虫とずっと一緒に過ごしてきたので、こんなのへっちゃらです」
「へぇ……、そうなのか?」
「ええ。ですから、遠慮せずどんどん泣いてください。子どもの特権です。これを使わない手はありません」
「ははは、私が子どもなら、光希だってまだ子どもだ」
「あなたの倍ほどは生きてますよ」
「でも、子どもだ」
「……じゃあ、しんどくなったら俺も泣きます」


そう言って光希が笑うと、目に涙を浮かべながら輝利哉も笑った。


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