第47章 炭治郎
「……俺が、桃色の子に最後に会ったのは、その子のご両親の…納骨日だったんだな」
「そう、だな」
「俺、よく分かってなくて。大好きな子が来たのに、ちっとも遊べなくて拗ねてた。……その子も何も喋らなくて、父さんの腕の中でぼんやりしてて……」
炭治郎が辛そうな顔をする。
布団を握る両手に力が入り、深いシワを刻む。
「喋ってくんないから、俺、嫌われたのかなとか思ってさ……どんどん悲しくなって……」
「炭治郎……」
「あの日、光希、辛かったんだな。俺、側にいたのに何も出来なかった。一人でめそめそ泣いてた。そっか、あの遺骨、叔父さんと叔母さんだったのか……」
炭治郎が目に溜まった涙を乱暴に拭う。
「ごめんな、俺、何も出来なくて」
「何言ってんだ、五つだぞ。わかんなくて当たり前だ。俺はその辺りのこと全く覚えてねえし、気にすんな。……逆に、悲しい思いをさせてごめん」
「いや。……だいぶ、混乱してたんだろうな」
「うん、記憶がふっとんじまったくらいだから」
「そうだな」
「悪いがその日、『炭治郎ちゃん』のことは目に入ってなかったと思う」
ぶっと、吹き出す男子二人。
「炭治郎ちゃんはやめてくれ……」
「あはは、あれ?そう呼んでなかったか?違った?」
「いや、そうだけど……」
「あれ?そういや俺のこと……」
「『めっちゃん』って呼んでたな、光希のこと。何でだろうな?」
「確かに、そう呼ばれてた気がする。何でめっちゃんなんだ?……めっちゃん…めっちゃん…」
少し思案して、光希は苦笑いする。
「……はは。『嫁』かもな。お嫁さん、およめちゃん、よめっちゃん、めっちゃん、の流れじゃないか?」
「それは……有り得るな」
「なんだよ、嫁がせる気満々じゃねえかよ…家系図の法則どうしたよ、父様母様……」
「俺の親も親だな」
「……いや待てよ、竹ちゃんを俺の婿養子に貰うつもりだったのかも。炭治郎は長男だから貰えねえし」
「それか、ふもとの村に羊がいたな。光希は動物好きだから…」
二人はいろいろな可能性を考えながら笑い合う。
どちらも親を失っており、もう真偽はわからないと知りながら。