第47章 炭治郎
光希は母親の日記を、炭治郎に見せる。
炭治郎は食い入るように日記を読む。
「光希、昔……桃色の着物着てたか?」
「ああ、うん」
「そっか、あの女の子、光希だったのか……」
「! 覚えてるのか?」
「勿論だ。髪の毛をいつも二つに結んでて。凄く可愛い女の子だった。俺の…初恋の子だよ」
炭治郎は光希から目を逸らし、照れくさそうに頭をかく。
「俺もそれ読んで、緑色の服着た男の子思い出したよ。あれは炭治郎だったんだな」
「俺はずっと覚えてたのに、今の今まであれが光希だとわからなかった」
「はは、まあ仕方ねえよ、俺、今こんなだし」
「いやでも、……うん。言われてみれば、光希だ。間違いなく。面影あるし、凄くお転婆さんだったからな」
光希は笑いながら髪を解き、両手で二つ結びに見えるよう髪を持ち上げる。
「こんな感じ?」
悪戯っぽく笑ってみせる。
……か、可愛い
男子二人が頬を染める。
「う…、うん。そんな感じ」
「あはは、照れてら」
「からかうなよ、光希」
「あははは」
光希は笑って髪を戻す。
「炭治郎は変わってないな。ちっちゃい時とそのまんまだ」
「そうか?」
「うん。お目々がくりっくりでな。可愛かった。もの凄く優しくて。……でも怒ると怖いんだ。俺が泣いても、ちゃんと謝るまで許してくれなかった」
「へえ」
「たぶん…俺の初恋も、炭治郎だよ」
「お互い、ずっと忘れてたわけだけど、俺、鼓の屋敷で光希と会った時、なんか妙に懐かしかったんだ」
「うん。俺も。なんだろうって思ってた」
「謎が解けたな。禰豆子がいきなり光希に懐いたのも、昔、会ってたからなのかもな」
「そうだね。記憶がなくても、……感覚は残るんだな」
「光希、……久しぶり」
「久しぶり、炭治郎。十年振り…?かな」
そう言って二人はくすくすと笑った。