第46章 生家へ
「もっかい家に行って書斎を漁って情報集めなきゃ…きっと竈門家とのことが書かれたものがあるはず…。あとは…柱稽古のことと、あ、輝利哉様の兵法指南もやんなきゃ…軍議もあるなあ……」
ぶつぶつと呟く光希。
「……お前が二人いればいいのにな」
「あはは、こんなのが二人いたら大変でしょ。喧嘩も二倍だよ」
「お前が二人居たら、どっちか炭治郎の嫁に行く?」
「んー…どうだろ。行かないだろうね。どっちの私も、善逸の所に行きたがるよ。だから、善逸も二人必要になる」
「俺こそ二人も居たらやばいだろ」
「あ、煩い自覚あるんだ」
「あるよ。よし、なら俺が一人で二人の光希を引き受けるよ」
善逸は「天国だな」と笑う。
「はは…。本当に困ったな…時間がないや……」
「焦るな。周りを頼れ。一人で抱え込むな」
「うん……柱稽古の指揮は天元さんに任せよう」
「そうしろ。よくわかんねえけど。三日くらいは休め。身体が辛いだろ」
「そうだね……とりあえずは明日、蝶屋敷ね」
「わかった」
善逸は光希に布団をかける。
「今は、寝なよ」
「うん。ありがとう」
「おやすみ」
「おやすみ……」
光希は目を閉じる。
善逸が髪をなでていると、すぐに眠りにつく。
善逸は日記を開く。
幼い日の光希を頭に思い描きながらページをめくる。そこには沢山の光希が、文字として綴られていた。
今と同じお転婆な女の子が、泣いたり笑ったりしながら生きていて、善逸は微笑む。
……あ、こいつら、一緒に風呂入ってやがる
たまに出てくる「炭治郎くん」との仲良しエピソードに胸が締め付けられるように苦しくなる。それでも、読む。
……へへーんだ!これだけ二人が想い合ってても、十年後の今、こいつが愛してるのは俺だもんね!
自分に言い聞かせる。
そして、
……凄く愛されて育ったんだな、光希は
善逸の、日記を閉じたときの一番の感想はそれだった。
自分との違いにまた胸を詰まらせるが、その都度丁寧に自分で整理していく。
……大丈夫だ、俺は。俺も乗り越えなきゃいけないんだ。大丈夫、大丈夫。出来る
善逸はそう言い聞かせて、自分も布団に入る。
眠る光希の手に、自分の手をそっと重ねた。