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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第46章 生家へ


「はぁっ、はぁ…ぜー、ぜー…ゲホッ……」


盛大に息を切らして、善逸は隠れ家に辿り着いた。
息を切らしつつも、速度をほとんど落とさなかったことに驚嘆する。

人一人抱えて、家まで走り切った。


「もっと、爽やかに、帰宅、したかった、はぁ、はぁ……、くそっ…かっこ悪いな……」

よろよろと玄関に座る。


「いやいや、凄いよ善逸くん。あの速度で走り切るとはね」
「はぁ、はぁ、ふー…ふー…、身体、大丈夫か?」
「うん、あなたよりは遥かに大丈夫だよ」
「はは、そっか、確かに。そんならよかった」

「ありがとう、善逸。かっこよかったよ」

光希は善逸の頬に口付けを落とす。


「はぁ、はぁ、場所が、違うだろ……」

善逸は笑いながらそう言って、こっちでしょと自分の口を指差す。


「そこは今、酸素吸うので精一杯」
「……よし、じゃあ、後で口吸ってやる」

よろよろの身体とは裏腹に、なんだかふっきれたような顔をしている善逸。
呼吸が落ち着いてきたのか、草履を脱いで立ち上がる。


「お風呂沸かすから、善逸、休憩してて」
「ありがとう」

善逸は居間に入り、隊服を脱ぐ。
着物に着替えて一息つく。


……よし、なんとか走りきった



善逸は、絶対に足を止めないと決めて走った。

自分の家に、自分の意志で、自分の力で光希を連れて帰る。
なんとなくそうしたかった。

受け身じゃなくて、もっと能動的にならないと、この子は捕まえておけない。そんな気がしたから。


ちっぽけな目標を達成しただけだけど、なんだか誇らしかった。



……でも、これに子どもの体重が乗ってたら無理だったな。まだ俺は、父ちゃんにはなれねえわ


そう思って笑うと、隊服の胸ポケットから鍵を出し、小さな袋に入れる。

袋には、子どもの頃の手習いの紙と、光希からの手紙が入っている。鍵が入ったことにより、重さが増したお守り袋。


「未来に繋いでくれ、……頼む」


絶対は袋を祈るように両手で持ち、額の前で握りしめた。

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