第46章 生家へ
夕方の帰り道、行きと違ってゆっくりと歩く二人。
「いたた……」
下腹部を抑える光希。
「大丈夫か?」
「なんとかね。ふぅ……」
「おんぶするよ」
「いいよ、恥ずかしい」
「血、出てきた?」
「それはまだ。でも安心して。この感じだと今夜か明日には来るよ、良かったね」
「ふう、焦った……」
二日程遅れてやってきそうな生理に、善逸は心底安堵する。
「まあ、今は無理だけどさ…いつか生まれたら嬉しいな、俺達の子ども」
「………そう、だね…」
先を考えていない光希からは、生返事だ。
「なに、その感じ。子ども欲しくないの?」
「……ん?そんなことないよ」
「乗り気じゃないねえ」
「……別に。女の子生まれて、善逸に似ちゃったら可愛そうだなって思っただけ。ははは」
「はあ?めちゃめちゃ可愛いわ。俺そっくりの女の子。愛嬌があれば女はいける!」
「あははは」
完全に笑って誤魔化している。
……こいつ、本当に未来見てねえわ。どうしたもんかねえ
「あ、これ返すよ。ありがとう」
善逸は光希の家の鍵を出す。
「……いいよ、あげる」
「え?でも」
「二本あるもん。私は要らない」
「んじゃ、もらっとこうかな。綺麗なお家だったな。手入れすれば住めそう。この先、隠れ家を冨岡さん家に返しても、住む家が出来たね」
「そうだね」
お腹が痛いのか、いまいち元気がない光希。
何かを考えている。
「何処かで休むか?」
「んー、いい。頑張る。……早くお家帰りたい」
光希がそう言うと、歩いてたはずの足が地面から離れる。
「わ!ちょっと、」
「なら、これが最短だな」
善逸が光希を抱きかかえて林道に入る。
「歩けるよ!」
「早く帰りたいんでしょ?」
「でも……」
「走るよ、黙って!」
そのまま善逸は走り始める。
「重いよ!大丈夫?」
「軽い!しっかり捕まってろ!」
林の中を、山の中を、善逸が光希を抱いて駆けていく。宇髄ほどの速さも安定感もないが、身体を預けるには十分な逞しさだった。
「……いや、重いでしょ」
「余裕だわ。これに俺そっくりの女の子が追加されてもへっちゃらだよ」
走りながら少し息切れし始めた善逸を見て、光希が笑った。