第46章 生家へ
「あなたのお父さんと、私が親戚なの。少し遠いんだけどね」
「そうでしたか…父のことを何かご存知ですか?」
「優しい人だったわ。実は、…私の初恋の人よ、内緒ね。ふふっ」
「へぇ、そうだったんですね」
女将は悪戯っぽく笑ってみせた。
「あなたのお父さんはね、あなたのことをとても愛してたわ。もう本当に親ばかでね。嫁にはやらんっていつも言ってた……」
「あっははは!善逸、やばいね」
「おお……」
「光希、あの人の娘であることを誇りなさい」
「はい。ありがとうございます」
「幸せにね」
「……はい」
「善逸、頼むわよ」
「はい」
そして、「これを渡すわ。あなたのものよ。あなたが記憶を取り戻したら渡そうと思ってたの」と家の鍵をくれた。
先程庭から掘り出したんすよ……とは言えずに、恭しく鍵を受け取った。
女将は部屋を去っていった。
「……お金、良かったのかな」
「あんなふうに返されちゃ、受け取るしかねえよ」
「お店に貢献しようと思ったのにね」
「まあ、儲かってそうだし、いいんじゃね?」
そして目の前の鍵を見る。
「いやあ、全くもって驚きでござる」
「ぶはっ!いや、お前ここで『ござるさん』出すな!ぷくく……」
「行く順番を間違えたでござる」
「くくくっ……やめろ、笑いが止まらん」
「あんなに苦労して掘り出したのに、くくっ、あっさり…もらえた……ふ、ふふふ……やば、めっちゃ笑えるっ…!」
「お前が一生懸命記憶を辿って、手ぇどろんこにして掘ったっつーの!ぶっ、ははは!」
「まさか、こことあそこが繋がってるなんて思わねえもん!俺、掘るときちょっと手ぇ擦りむいてっからね?ほら見て、ここ!あはははっ!もう、何やってんだっつの!」
二人はゲラゲラと笑い転げた。
「まあ、こういう事もあるってことだな!勉強になりました!」
笑っていると食事が運ばれてきて、ご飯を美味しくいただいた。
その後、大きな湯殿でのびのびと入浴し、大満足で過ごす。