第46章 生家へ
光希も部屋に戻り、以前切った自分の髪と、育手が遺した地図を持つ。
宿屋に泊まることになってもいいように、最低限の着替えも持った。
善逸が受け取っておいてくれた薄紫色の羽織を着る。
「父様…母様……」
呟くと部屋の外に善逸の気配。
「行こうか、光希」
「うん」
二人は家を出発する。
光希の死支度ランキングのかなり上にあるだろう生家訪問。
上にあるだけに、これを止めることはできないと善逸は判断した。例え止めても、一人で行ってしまうことは明白だ。
迷いはあったが、これは果たさせることにした。
「あんまり遠くない。山道走るか」
「いいぜ」
「こっちか。付いてきて」
住所と鴉を頼りに、二人は山を駆けていく。
「十年放置されてるんだよね。まだ、あるのかなぁ。取り壊されててもおかしくないよね」
「確かに…全くわかんないな」
「師範が調べてこれを書いたのがいつなんだろ」
「その段階では、存在したってことだよな……」
光希は心底嬉しそうにしており、複雑な心境の中、善逸も頬を緩める。
どうか、取り壊されていませんように。
そう祈りながら走っていく。
二人は喋りながらかなり急ぎで走って、夕方前には付く事が出来た。