第45章 訪問者
宇髄は善逸を見つめて言う。
「お前にしかできない、特別指令だ」
「はい」
「だがまあ、やりたいことはやらせてやれ。あいつは今、相当無理してるからな」
「……矛盾してます」
「だからお前に任せてんだろが。あいつにとっての優先順位を見て、上位だと思うものをやらせずに残せ。うまくやれよ」
「……はい」
「判断はお前に任せる。あいつが戦闘後に、何が何でも生きたいと思わせるように仕向けろ。まあ無惨戦で死んだらそれまでなんだがな」
「わかりました」
「頼んだ」
宇髄は、善逸の肩に手を置く。
「お前も、辛いな」
「いえ、別に。光希に比べれば。……少しでも支えてやれれば、と思うだけです」
「まあ、向こうにいるときは俺が支えるから」
「………」
「んだよ、なんか文句ありそうだな」
「あんたでしょ、光希抱きしめたの」
「そうだ。俺はあいつの緊急避難所だ。お前がいないんだから仕方ねえだろ」
「……どうしても必要な時だけですよ」
「わかってるよ」
「手ぇ繋いだのは何でですか?」
「そりゃ俺じゃねえよ、時透だ。俺は離させてやったんだよ、派手に感謝しろ」
「あんただけじゃないのかよ……はぁ…」
「あいつら歳も近いし、仲良くなったぜ」
「俺の方が心労で倒れそうだ……」
善逸は頭を抱える。
「もう根を上げるのか?」
「……まさか。冗談でしょ」
「すぐにかっさらわれてくぞ」
「わかってますよ。でも、渡しませんから。誰にも」
善逸は真っ直ぐに宇髄を見つめて言った。
「じゃ、可愛い光希が家で待ってるんで失礼します。あなたも三人のお嫁さんが待ってるでしょ。早く帰ってあげてください」
善逸はぺこりとお辞儀をする。
「指令、忘れんなよ」
「はい。頑張ります」
宇髄はふわりと消える。
善逸は握りしめていた手の力を抜く。
震えないように必死だった。