第44章 補充※
寝顔を見ながら善逸は思う。
――小さい時とおんなじ寝顔だ。まあ、そりゃそうか。……例えこの寝顔を誰かに見られても、昔の寝顔を見たことあるのは俺だけだもんね。へへん。ざまみろ
どうでもいい事で虚勢をはる。
――俺、十四くらいまで、毎晩こいつと一緒に寝てたんだよな。……はぁ、信じられねえわ。よく我慢してたなって、我慢もなにも男だと思ってたからな……
え?そういや、おっぱいどうしてたんだ?潰してたのか?ぺったんこだったのかなあ…わかんねえや……
善逸は、大きくはないがそれなりに大きさのある胸に目をやる。
――夏は別々だったけど、冬は一緒の布団で寝てたなぁ。こいつ、そん時どう思ってたんだろ。……どうせきっと、何とも思ってなかったんだろうな…ゆたんぽ扱いだろな……
『善逸、お前手足が冷てえんだよ!』
『だからお前で温めるんだろ!』
『ひぃぃ!寒い寒い!逆に寒いわ!』
『少しすりゃ暖かくなる!うお、光希の足あったけー!』
『ぎゃぁー!冷てえーー!熱が吸われる!』
『一度俺が吸ってまたお前に戻してやるから』
『早く戻せ!寒いっつーの!』
善逸は昔を思い出し、ゆたんぽは光希の方だったと思い至って苦笑する。
上になってる右手で、光希の髪を撫でる。
「お前、今は何を考えてんだ……?」
眠る光希に声をかける。
「本当は、祝言、あげる気ないだろ……なあ」
光希の顔に落ちてる髪を耳にかける。
「戦いで…死ぬ気だろ……」
善逸は、眉をぐっと寄せる。
「勝っても、負けても…お前は……」
髪が耳にかけられたことで顕になった彼女の頬に、善逸はそっと口付けを落とす。
……全てがお前の思い通りになると思ったら大間違いだぞ!このやろ!死なせてたまるか!
「……俺にバレてるようじゃ、まだまだだな」
善逸は少し起した身体をまた横たえて、光希をしっかりと抱きしめる。
離すもんかというように。
「あん時お前から吸った熱を、今返してやるよ……」
布団の暖かさと身体に残る気怠さから、善逸も早く眠りについた。
二人の新婚初夜は、過ぎていった。