第6章 蝶屋敷 2
とりあえず挨拶でもしてこい、と炭治郎を送り出した光希。
「善逸、どう思う」
「気付いてないだけだろう、炭治郎が。自分の気持ちに」
「俺も。そう思う」
「まあ、他人が口出すことじゃないだろ」
「まあな。でも、俺は炭治郎もカナヲも大好きだから。気にはなるな」
裏庭を見ながら光希が言う。
大好き、の言葉に胸がチクリとする。
「珍しいな。お前が恋愛事に首突っ込むの」
「ん?確かにな」
「やっぱり、炭治郎は特別か?」
「特別?うーん、どうだろう。わかんねぇ」
「炭治郎をカナヲちゃんに取られても平気なのかよ」
「え?もともと炭治郎は俺んじゃねぇし」
「でもお前と炭治郎仲良いだろ」
「まあな、炭治郎の事は好きだよ」
「ほら。だったら寂しいだろ」
「別に。俺には善逸がいるから」
その一言で善逸の生命活動が一時停止した。
……今、コイツ、何ツッタ?
「俺にとって特別なのは善逸だ。善逸がいるから大丈夫だよ」
にこっと笑う光希。
どういう意味の言葉なのかはわからないが、一時停止してた呼吸と心臓が三倍速くらいで動き出した。
それは、兄弟としてって意味なのか。それとも……
そこへガラッと開かれる扉。
「光希!!!」
頬を赤らめた炭治郎が息を弾ませて帰ってきた。手には花を持っている。
「見てくれ!これ!声掛けにいったら庭に居て、返事はなかったけど、これくれた!」
「おお!よかったなぁ、炭治郎」
興奮冷めやらぬ炭治郎は、そのまま光希をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、光希!」
「ちゃんと声掛けにいったんだな、偉い偉い」
善逸は無言で光希を炭治郎から離させる。
炭治郎の腕から抜けた光希は手に握られた花を見る。
「なでしこ、だな」
「そうなのか?」
「確か花言葉は…純愛だ。お前とカナヲにぴったりだな」
そう言うと、炭治郎は顔を赤くした。
少なからず自身の恋心を自覚し始めたのか。
「押し花にするなら、やり方教えてやるよ」
「あ…、ああ。うん。ありがとう!」
二人のやりとりを見ている善逸。
俺も、炭治郎みたいに素直になれたらいいのに、と羨ましく思った。