第6章 蝶屋敷 2
全集中・常中を会得してからも、光希は鍛練を続けた。
そして、光希とカナヲは仲良くなった。口数の少ないカナヲだが、歳が近く人懐っこい光希とは比較的打ち解けてよく一緒に話していた。
二人で話をしている姿は恋人同士にしか見えず、その光景を三人娘はうっとりとしながら見ていた。
「光希は、いいなぁ」
炭治郎がポツリと呟いた。
「ん?なにがだ?」
「カナヲと仲良く話せて」
「炭治郎、カナヲと仲良くなりたいのか?」
「うん」
「話かければいいだろ」
「話してくれないんだ」
「そうなのか?」
「俺、嫌われてるのかな……?」
しょぼんとする炭治郎。
「そんなことないだろう。善逸ならともかく」
「おいぃぃぃっ!!!」
「いつもにこにこしてるけど、それが逆に、拒否…されてる感じがするんだよ。扉が閉まってる気がする」
「ふぅん…。炭治郎は、どうしたいんだ?」
「え?」
「拒否されてたとして、どうしたい?」
「無理に入りたいとは思わない。…けど」
「……けど?」
「なんか、気になるんだ、あの子。仲良くなりたい」
「ふぅん。じゃあ無理に入るんじゃなくて、まずは何度か扉を叩いてみたら?俺も始めはそうした気がする。そしたら、ちゃんとカナヲは中から扉を開けてくれる」
「嫌がられないかな」
「それはやり方次第だろ」
「俺、失敗しそう」
「はは、どんだけ自信ないんだ」
「俺、女の子にどうやって話しかけようとか考えたことないから……」
「まあ、深く考えるな。挨拶だけでも大丈夫だ。まずはカナヲに炭治郎の存在を気付いてもらえ。言っちゃなんだが、今のところカナヲの視界にすら入っていないからな」
「そう…だよな」
ずーんと落ち込む炭治郎。
「あ……、や、ごめん。あ、そうだ。今度俺と一緒にカナヲん所行くか?俺が居ればなんとかなるかも」
「いいのか?カナヲ嫌がらないか?」
「驚きはするかもな。ま、大丈夫だろ。まずは友達になれ」
「え…?まずは、って何だ?俺は友達になりたいんだけど?」
「……え?」
「……は?」
ずっと恋愛相談だと思って聞いていた光希。同じくそう思って会話を聞いていた善逸と共にポカンとしながら声をあげた。
炭治郎の「カナヲと仲良くなりたい」はそのままの意味だった。