第43章 覚悟 2

「天元さん！」

光希は屋根の上に声をかける。
宇髄が、音もなく下りてくる。

「あ、下りてこなくてもよかったのに」
「いや」
「蜜璃さんたちの所行ってくるね。炭治郎の様子も見たいし、中入るわ。もう帰ってもいいよ。連れてきてくれてありがとね」
「おう」


柱と対等に話す姿に善逸は唖然とする。

その間に光希は走り去ってしまった。


「……お前さ、馬鹿なの？」
「………ですね」
「あいつが向こうでどんな思いで過ごしてるか、知らねえだろ」
「……はい」
「お前にどれだけ会いたがってたか。それをどれだけ必死に抑えて頑張ってたか。流石に殴る気も失せるわなぁ…」
「…すみません」
「謝る相手が違う」


宇髄はそれだけ言うと、光希が走っていった方へ歩いていった。


庭に残された善逸は、地面を見ていた。


「いたいの？」

禰豆子が心配そうに覗き込む。

「うん……痛いよ」
「いたい…いたいよ…」
「痛い…俺は馬鹿だな」

善逸は俯いたまま、その場を離れる。



光希は甘露寺と付添の伊黒、無一郎と話をしていた。会うなり三人は頭を下げてきたので慌てて止めさせる。

途中で宇髄も加わり、元柱を含めて四人が部屋に集結することになって、隠たちは恐れおののいた。


「お二人とも、大丈夫そうで良かったです。伊黒さんも付き添いお疲れ様でした」

「心配かけてごめんねえ」
「甘露寺に付き添わせてくれたことに感謝する」
「大事な人が側にいてくれるのは、何よりの回復効果がありますから」

光希がそう言って笑いかけると、二人は照れくさそうに頬を染める。


「じゃあ光希は僕に付き添ってくれたら良かったのに」
「時透さん、何か雰囲気変わりましたね？」
「そう？みんな言うけど自分じゃよくわからないよ。昔を思い出したからかな……」
「昔を？」
「そう、死んだ兄さんのことをね」

寂し気に無一郎が笑う。

「……辛かったですね。頑張りましたね」

光希は無一郎の頭を撫でる。

「でもこれで、時透さんはもっと強くなりますよ」

にこりと笑いかける光希に、無一郎も微笑む。