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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第43章 覚悟 2


そこへやって来る黄色の頭。
目尻は下がり、くねくねしている。


「禰豆子ちゃぁーん!今日も可愛いねえ!うふふ!今日こそ俺の名前呼んでね?そした俺たち結婚かな?」


屋根の上の宇髄は、それを聞きながら固まる。

おそるおそる光希を見ると、彼女は口元に笑みを浮かべてドス黒い顔で笑っていた。


「ちょーっと…ぶん殴ってくるわ」
「あ、ああ。殺すなよ」


光希は、屋根からひょいと飛び降りる。
善逸と禰豆子の間に着地する。

「おお!禰豆子、凄いな、喋ってて!」
「すごいな!しゃべって!」
「うんうん。偉いぞ、凄いぞー」
「えらい!すごい!」

光希は禰豆子の頭を撫でる。


光希が現れた瞬間に「ひっ…」と小さく悲鳴を上げたまま固まっていた善逸が、やっと口を開く。


「あの……、光希…さん、」

冷汗をだらだらと流し、青ざめている。


「よう、善逸。元気そうで良かったよ」

振り向いた光希は笑顔だが、目が笑っていない。

……怖い。とてつもない殺気だ


「ごごごごめん。本当に本気でマジで凄くごめんなさい」

「……ほう」
「あの、その、殴って、俺のこと。思いっきりどうぞ、はい!ボコっていいから、ね」
「へえ……」
「ねえ、その顔怖いよ、何考えてんのやだ。別れるとかやめて、ね?やだよ?俺泣くよ?」

善逸は震え出す。

「殴られる覚悟はあるって訳か」
「も、もちろんだ!前に言ったろ!来いっ!」
「……歯ぁくいしばれっ!」
「………っ!!」

光希は右手の拳をぶんと振る。
善逸は歯と拳に力を込めて、目をぎゅっとつむる。



……しかし、衝撃は来ない



「……え?」

善逸がこわごわ目を開ける。
光希は自分の握り拳をじっと見つめている。


「……光希?」
「まあ、…いいや。お前殴っても、俺の手が痛いだけだ。禰豆子の前で暴力沙汰もなんだしな。……じゃな」


少し悲しそうな顔で笑い、善逸に背を向ける光希。


「お、おい、光希」


善逸が声をかけても振り向かない。
彼女からは悲しい音がした。

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