第42章 覚悟
「よし」
縫い付けた釦をぐっと引っ張って、取れないか確認する。
「取りやすくしといた方が良いんじゃねえの?」
「そうだな……でも、あまり効果的とは思えなかったな。やっぱ投げるなら、あんたみたいに殺傷能力のあるものじゃないとな」
上着を羽織って、腕を組んで考える。
いろいろ策を二人で話す。
その後、先程の手合わせを見ていた宇髄から、気付いた事を教えてもらう。
「手首ね。こう?」
「違う。こっちだ。こうすると流れに乗れるから、無駄がなくなる」
「なるほど。癖になってんだな。こうして、こう……で、こうか」
「そうだ。だいぶ変わるぞ」
「ふんふん、ありがと。他は?」
「体力と筋力、だなぁ……」
「だよねぇ……」
光希は溜息をつく。
そればかりは男に勝てない。
自分の細い腕を見る。
「ねえ、天元さん……」
「ん?」
「俺に……こんなにへなちょこな俺に、みんな付いてくると思う?」
「……どうだろうな」
「気ぃ遣わなくていいよ。付いてこないだろ、普通。入隊一年目の小娘だもんな。不信感しかないよな……」
「まあ、な」
「どうすっかなー……」
光希はごろりと寝転ぶ。
「……天元さん、俺、ちょっと寝るわ」
「は?」
「夜、起きてられるように……」
「え、おい……」
「悪いけど、部屋から出て。好きにしてていいから……どっかいって、遊んできていいよ……」
そのまますやすやと昼寝を始める光希。
……こいつ、よく寝るな。成長期だから眠いのか?遊んでこいって、子どもじゃねえんだよ
苦笑いしながら、そこらにある布を被せてやる。
確かに、この娘が、隊士たちから信頼を受けるのは難しいだろう。柱からの昇格ならまだしも、一足飛びに最高位まで登りつめたとなると、やっかみも激しい。
ただでさえ、冨岡の寝子と言われている光希だ。実力も十分にあるのだが、それを知らない隊士も多い。
……なんとかしてやらねえとな
宇髄はしばらく、眠る光希を見つめていた。