第42章 覚悟
光希は悲鳴嶼に稽古をつけてもらった。
稽古に同席する宇髄。
力の悲鳴嶼に速さの光希。
室内なこともあって悲鳴嶼は武器を使わずに素手だ。竹刀で技を繰り出す光希だが、容易に吹っ飛ばされる。
……隙がねえ!
悲鳴嶼の繰り出す技を躱しながら反撃を狙うも、先読みされていなされる。
……ちっ!
「どうした、もう降参か!」
「はぁ、はぁ、冗談でしょ。まだまだ行けますよ!」
さあどうする、光希!
二人の柱が光希を見つめる。
悲鳴嶼が上段から大きく手刀を振り下ろす。
とてつもなく速くて重いこの攻撃に、苦戦している光希。竹刀で受けても重すぎて駄目、躱しても返す刀で弾き飛ばされる。
……そう何度もやられてたまるかっ!
光希は一の太刀を横跳びで躱す。
そこから横に凪払われる二の太刀を上へ跳んで躱す。
その瞬間、光希は悲鳴嶼からの三の太刀が来る前に何かを投げた。
「……っ!!」
何を投げた、と驚く悲鳴嶼。
利き手に当たり、空中を追撃する三の太刀が緩む。
光希の跳躍は悲鳴嶼の攻撃を避けるものではなく、懐に跳びこむためのものだった。
……今だ!
「水の呼吸、壱ノ型、水面斬り!」
悲鳴嶼は右手で水面切りを受けた。
パシィ…と音が響く。
「うむ、見事だ。一本。」
「ぜぇっ、ぜぇっ、ありがとうございました、はぁはぁ……」
息荒く、頭を下げる光希。
一本といいつつ、悲鳴嶼の腕はほんのりと赤くなっているだけだ。
改めて柱との力の差に、奥歯を噛みしめる。