第42章 覚悟
その日、二人は夜遅くまで話をした。
途中、悲鳴嶼が顔を出したときや、食事のときに休憩をはさみ、それ以外を会話に徹する。
有効な作戦や、他愛もない話、光希はころころと話を転換させていくが、宇髄は難なくついていく。
風呂に呼ばれて、一度中断した。
「ったく……風呂で溺れそうになるかねぇ……」
「うぅ……死ぬかと思った」
「湯船で寝るなよ、馬鹿」
水をだいぶ飲んでしまい、具合が悪くなった光希。宇髄に支えられて部屋まで歩く。
とりあえず一人で脱衣所で着替えたものの、髪はびしょ濡れである。
「おえっ……」
「お前泳げねえのな。だから川が嫌いなのか」
「その通り……」
宇髄が、わしゃわしゃと髪を拭く。
「髪がぐしゃぐしゃになる……」
「何、そういうの気にすんの?お前」
「いや、特には。縛りにくくなるのが嫌だ」
「そうかよ」
宇髄は髪を整えながら拭き始めた。
「明日から、俺が一緒に入ってやる」
「それはいい。眠くなる前に入ればいいんだ」
「いや、それでも危険だ。付添おう」
「……変態忍者」
「違うぞ。お前は、隊の希望だからな。死なすわけにはいかないだろ?」
「風呂で溺死はお笑い草だな。総司令官史上、最強の笑い話として、後世に名が残る。やったね」
「俺が責任持って語り継ごう」
「うむ、任せた」
ふざけながら光希の目はとろんとしてくる。
「お前、夜更しできねえの?マジで?鬼殺隊なのに?夜が仕事場だろうが」
「任務の時は……大丈夫。徹夜もできるよ。今日は頭、使いすぎた。溺れて…怖かったし……」
「おいおい、こんなんで大丈夫かよ、お子様軍師……」
「うるさいな。……まだ起きててやるっつの!」
光希は目をパチパチさせて起きようと頑張るが、明らかに眠そうにしていた。
そんな彼女を見て、宇髄は溜息をつきながら布団を出して敷いてやる。
「明日からは夜も軍議するぞ」
「今日も…まだ、やれる……」
「無理だろ、そんなんで……」
「……やる!俺は、やらなきゃいけない……隊を、背負うんだ……、俺が……」
そう言いながら、光希はぺたんと畳に倒れる。