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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第42章 覚悟


光希と宇髄は向かい合って座る。
どちらも胡座をかいている。

「へえ……こんな狭い部屋で、布団もあって……それでも俺を優先させてくれるんだな」
「ああ、現在の最優先事項だよ」
「お前、男、舐めてんだろ」

「いや?あんたを信頼してるだけ。組敷かれたら終わりだってのはわかってる。でも、あんたはそんなことをしない。俺や嫁からの信頼を撃滅させてまで、一時の快楽に身を委ねるような馬鹿じゃない」


「ふーん……」
「ただ、一つあんたがそんな馬鹿になる可能性があるとしたら……」
「俺がお前に、どうしようもないくらい惚れた場合……か」
「ご明察。後先のことが判断できないくらいに惚れ倒せば、思考は全て消し飛ぶ。
でも、まだあんたはそれでも俺を襲わない。あんたが俺を襲うくらいに馬鹿になるには、もう一つの条件が要るだろう」

「もう一つ……」
「考えて」

「……お前が俺に惚れること、か?」
「大正解。天元さん、早い」
「まあ、普通は想い合ってなきゃ、ヤラねえわな」
「想い合ってなくても男は女を襲う。でもあんたは、俺があんたにベタ惚れしてると確信がなきゃ絶対に襲わない。本能を抑え込むことができる。忍だから」


「つまり、例え俺がお前にベタ惚れしても……」
「俺があんたに惚れることは、ない。だから、安心して惚れればいい。俺はどうも男を落としてまわるらしいからな。魅力的過ぎてごめん」

にやりと微笑みを浮かべる光希。


「お前、派手に馬鹿だな」
「心外だ」
「お前みたいなガキに、この俺様が惚れるわけねえだろ」
「そんなら安心して距離を詰めていけるな」


「お前の方こそ気をつけろよ。俺は女から派手にモテるぜ」
「知ってるよ。モテる理由もよくわかる。あんたはいい男だ。顔だけじゃなくてな」
「惚れんなよ」
「心配すんな。あり得ねえ」

宇髄は頬杖をついて、光希を見つめる。


「そんなにあいつが良いかねぇ」
「俺は、あいつじゃなきゃ駄目なんだ」
「さっぱりわかんねえわ」
「わからなくて結構」

光希はくるりと身体の向きを変えて、膝を抱え込む。


「……善逸の話、しないで。逢いたくなっちゃうから」


顔を本棚に向けて頬を染めながらそう言う光希に、目を丸くした宇髄は早くも前言撤回しそうになった。

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