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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第41章 じいちゃん


部屋に戻ってきた善逸は、服が変わり、もこもことした髪を上半分後ろでしばっている。


「光希、髪の毛うまく結べない。やって!」
「別にいいじゃん。おろしてて」
「駄目だ!きちんとしないと!前髪少し上げて!」

そう言うので、男としては長めの髪を上の方だけ軽くしばってやる。


「服も、これが一番いいやつ。ごめんな、こんなんで」

善逸のいう準備とは、心の準備と光希の為の準備だったようだ。
それがわかって光希は、口には出さないが堪らなく嬉しかった。


「……ばーか。見てくれなんてどうでもいいんだよ。私なんてお前の服だぞ」
「おいどうした、言葉酷いぞ。さっきまでのは俺の幻聴か」
「あはは。私を誰だと心得る。ちゃんとやるから安心したまえ」

光希は善逸の服も、びしっと整えてやる。
きちんとしたい、という彼の気持ちを尊重した。


「はい。良いですよ。男前です」
「……ありがとう」
「ここから先は、お任せいたします。善逸様」
「よくわかんねえから間違えたらごめんな」
「期待はしておりません。どうぞご自由にお間違えくださいまし」
「こんのやろ……」

善逸は光希の手を取り、座布団のところに連れて行く。

「じいちゃん、俺、どっち座ればいい?」
「師範と呼べ、今くらい」
「えー……」

「諸説ありますので、どちらでもよろしいのではないでしょうか。まあ一般的には男性が右側ですね」
「そっか。じゃ、そうしようかな」

善逸は光希を左側に座らせて、自分が右に座る。


二人は深くお辞儀をする。

「これより、我妻善逸並びに如月光希の仮祝言を執り行う」

慈悟郎が声をかける。

「この仮祝言は、拙者、桑島慈悟郎と……その妻、桑島法子が見届けることとする」


それを聞いた時、不意に光希の目から涙が溢れた。

――そうか。これは、師範達の祝言でもあるんだ



慈悟郎の隣で法子も笑っている気がした。

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