第41章 じいちゃん
光希が善逸の目を逸してる間に、慈悟郎はさっと涙を拭く。
「法子が生きておったら、お主らの婚約をなんと言うだろう。光希、どう思う」
「そうですね……、反対はしないとは思いますが、どちらかというと善逸は、師範の嫌いな種類の人間かと思います。すぐ泣くし」
「そうじゃな。毛虫のように嫌われるじゃろうて」
「そ、そんな……」
「また、善逸の知識量の乏しさから、師範と善逸の間に会話が成立するとは思えません」
「なるほどな」
「ねえ、もう助けて……」
「さて。どうやったら善逸が師範に気に入ってもらえるかな」
じっと善逸を見つめる光希。
冷や汗を流す善逸。
「……よし。決めた。一か月、善逸を師範の元へ弟子入りさせます」
「ほう」
「師範は小細工を見抜くので、我々程度が策を講じても無駄です。しかし、あの人はとんでもなく情に厚い。そこを利用する。懐に入り込むことが上策です」
「ふむ。一ヶ月で足りるか」
「十分かと。二週間くらい寝食を共にすれば、しっかりと情がわく。良くも悪くも、あの人の弱点だと思います」
「そうか。なるほどな」
「善逸はその一ヶ月、死ぬ気で鍛錬してその傍らで本を読む。出来るか出来ないかは評価対象じゃないから。やる気を見せれば認めてもらえる」
「そ、そうか……」
「うむ!光希、見事な策じゃ。鬼殺隊の未来は明るいな」
「光栄です」
光希と慈悟郎は笑った。
「……情に厚い人だったんだな」
「うん。不思議とどこか伊之助に似てる」
「はぁ?伊之助?一番遠いだろ」
「そう思うだろ?でも、あいつも仲間には徹底的に優しいだろ。こいつ好きだって思ったら、ぐっと距離を縮めて世話焼きたがる」
「確かに……親分だ子分だっつってな」
「そういう所、似てんだよ。師範は、めちゃめちゃ頭が良い伊之助って感じ」
「ごめん……、想像できねえわ……」
善逸が頭を抱える。