第41章 じいちゃん
「慈悟郎様、師範のお墓に案内いただいてもよろしいでしょうか」
「……うむ。家の裏じゃ。付いてこい」
「はい」
光希は刀と花を手に持って立ち上がる。
善逸も立つ。
二人は慈悟郎に付いて家の裏地へ行く。
そこには小さな墓があった。
光希は黙って墓の前に座り、花を供えて手を合わせる。
善逸も光希の隣で手を合わせた。
「……少し、師範と二人にしていただけますか」
風が静かに光希の羽織と髪を揺らす。
「……好きなだけ、居るがいい。戻るぞ、善逸」
「はい」
慈悟郎と善逸は家に入っていった。
墓の前に残された光希。
刀を墓の前に置く。
「師範。水の剣士らしくない色になりましたよ。なんでかな。あなたの刀は透き通るような水色なのにね」
「慈悟郎様がね、俺にはこの刀の資格があるって言ってくれました。でも、まだ重いです」
「でも、不思議と手に馴染むんです。ずっと前から持ってたみたいに」
「これ持って、戦いに行きます」
「鯛焼き、買って帰ってくるから。ここで、慈悟郎様と待っててくださいね。賭けは、あなたの一人勝ちですよ」
光希は墓石を抱きしめる。
「師範、大好き」
墓石に、頬ずりして微笑む。
おでこをこつんと当てて目を閉じる。
「立ち止まらずに進みます。見ててください。頑張るからね」
光希は刀を持って立ち上がる。
深くお辞儀をして、家に戻った。