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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第41章 じいちゃん


抜かれた刀身に、ズズズ……と色が入っていく。
三人が息を呑んで見つめる中、刀は深い紺色へと変化した。


「え、紺色……?」
「前の刀は青だったろ?」
「ふむ。何か光希の中で変わったのかもしれぬな。ここまで色が濃いのは珍しい」

「炭治郎の黒刀に近いな」
「あそこまで黒くないよ。青みがかってる。
……あれ?慈悟郎様!文字が…」


柱になったとき用の刀と聞いていたので、『悪鬼滅殺』が刻まれていると思ったが、違った。

光希は慈悟郎に刀を渡す。


「知以滅殺……」
「ちいめっさつ?」
「知をもって滅殺せよ……」

慈悟郎は手元の刀を見つめる。


「……法子は、わかっていたのかもな。お主が柱にならずに、自分の後の総司令官になるのだと…」

刀を持ちながら、涙を堪える。



「光希、どうか頼む。法子の想いを繋いでくれ。お主にしか出来ぬ」
「はい。力不足で恥ずかしい限りですが、精一杯精進いたします。……慈悟郎様の想いも、師範の想いと共に持っていきます」
「かたじけない」


慈悟郎は光希に目を向ける。


「濃い色は他の色に染まりにくい。それ故尊いと儂は思っている。この濃紺は、お主によう似ておる。黒くなりきらずに、己をちゃんと残しておるところもお主らしい。美しい色だ」

慈悟郎は目に涙を浮かべながら、刀を光希に渡す。


「ありがとうございます」

光希は改めて刀と刻まれた文字を見る。
刀身には樋が入っており、軽い。が、それでもとてつもなく重く感じられた。


「善逸」
「ん?なに?」
「お前も、これ、持ってくれ」

光希は柄を善逸に向ける。

「え?なんで?」
「お前の想いも持っていきたい」
「? いいけど」


善逸は柄を握って刀を持つ。
文字を自分の目の前に掲げ、「……光希をお導きください」と、目を閉じて祈るように呟く。


「これでいい?」

にこりと向けられる笑顔。


「ああ。ありがとう」

善逸から戻された刀は、少しだけ軽くなった気がした。




慈悟郎はそんな二人のやり取りを微笑みながら見ていた。

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