• テキストサイズ

雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第41章 じいちゃん


「戦いの準備か。なるほどな。お主が背負っているその刀」
「はい、師範から頂いた刀です」
「見せてくれるか」
「はい」

光希は肩から刀を外して慈悟郎に刀を拝しながら渡す。


「美しいのう」
「ええ……とても……」

紫紺の鞘を、慈悟郎は見つめる。


「これが、法子の……」
「………はい」
「まだ抜いてないのか」
「……ええ。俺にその資格があるのか、と思いまして」

「お主なら、十分だ」
「……ありがとうございます」

「法子が死んだことと、この刀は無関係だ。お主が気に病む必要もない。聡明なお主ならわかるだろう」
「……ですが、どうしても、関連付けてしまいます。だいぶ整理は付きましたが」
「もしどうしても振り払えぬというのなら、この刀を使うことで迷いをはらせ」
「……はい」



「抜いて見せてくれ」


慈悟郎が刀を光希に返す。
光希は手に戻った刀をじっと見つめる。


「年寄りの頼みを聞いてくれ。頼む。儂は見てみたいんじゃ。桑島法子が、希望を繋いだ刀をな」


「希望……」
善逸が呟く。

『光希は鬼殺隊の希望だ』

以前、義勇が言っていた言葉を思い出す。
光希が隊で頭角を現すずっと前に、桑島法子はとっくに光希の中に希望を見出していたのだ。


「光希、抜いてよ。俺も見たい」


「……わかりました。鋏を貸していただけますか」
「うむ。善逸、棚から持ってこい」
「はい」

善逸は立ち上がり、棚をあさる。


「ほら」
「ありがとう」

光希は、鍔と鞘を結んでいる紙縒(こより)を鋏でパチンと切る。
スルスルと紙縒を外して脇に置く。



「……師範」

光希が刀の柄を握る。

「桑島法子様、あなたの想いを継がせていただきます」


キンッ……と鯉口を切り、ゆっくりと刀身を抜く。

/ 1083ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp