第40章 師範
善逸は身体を光希の方に向け、もう片方の手で繋がれた手を優しく包む。
光希の手の力が、少し緩む。
「ごめん、善逸。手ぇ痛かったね」
「全然。俺は大丈夫」
光希の手に、ぬくもりが伝わる。
「なあ、その刀って……」
「師範の部屋に置いてあるよ。一度も抜いてない」
「今回、本と一緒にそれも取りに来たのか」
「いや……迷ってる。どうしたらいいのか」
「お前の判断でいいんだと俺は思うよ。戦いでその刀を使うなら使えばいい」
「俺は柱じゃないよ」
「それでも、いい」
「いいのかな……」
「桑島さんがお前の為に作った刀なんだろ?」
「うん」
「なら、お前以外は使えない」
「……うん」
「ここに眠らせておくより、使ってあげた方がいいんじゃないのか?こんな物が無くていい世界にするためにさ」
「……どうした。格好いい事言って」
「なんだと?俺は元々格好いいんだ」
「そうだな。格好いいよ、お前は」
光希は、ふふっと笑う。
「じゃあ……最終戦に連れて行こうかな」
「おう」
「確かに、師範が側にいてくれると、頭が回りやすくなるかも。もうなんていうか、怖すぎて」
「はは。怖かったのな」
「うん。いつもぶっ叩かれてたよ」