第40章 師範
「机の二段目の引き出し、ってことかな?」
光希は文机の二段目の引き出しを開ける。善逸と一緒に中を漁るが、それらしい物は無い。
自室に移動して、自分の机も調べるが、特に怪しいものは無い。
桑島の部屋に行き、机の前に立つ。
白くて大きな机だ。
「師範、失礼します。開けさせていただきます」
光希は一礼して、二段目の引き出しを開ける。
引き出しは空だった。
がっかりする善逸。
「まじかよ。ここでもないのか。……他に机とかあるか?」
「いや…、ここだ」
「え、でも何も入ってないぞ?」
「俺の……逆転の呼吸だ!無いってことは、ここにあるってこと。違和感は答えへの手がかりなんだ。だからつまり、……ここだろ!」
光希は取っ手を引き、ガタンと音を立てて引き出しを外した。
そして、そのままひっくり返す。
引き出しの裏には、紙が貼り付けられていた。
「ほら」
「ひえぇ……凄え……」
紙を取り外して、開く。
そこには住所と、地図が書かれていた。
『光希出生地』と桑島の字で書き添えられている。
「光希……これって」
「あと二つが『記憶』『故郷』だったからな。もしかしてとは思っていたけど……、俺の生まれた家の場所だ」
「うおおお!凄えじゃん!これで行けるじゃん、お前の家!いつか行きたいって言ってたもんな」
「ああ」
「よかったな!俺も行きたい!一緒に、行こうぜ!」
「そうだな。行けたらいいな」
光希は地図を見る。
じっと思案する。
「どうした?」
「俺に記憶がなかったから隠してたんだな。そして、いつか記憶を取り戻して、暗号の存在に気付き、それを解く……。師範には、全部わかってたのかな」
「確かに。凄え先読み、だな」
「これはもはや予言者の域だろ」
「怖え」