第40章 師範
「このご飯が美味しくないのは、俺のせいじゃない」
冷めきって固くなったお芋の炊き込みご飯を食べながら、不機嫌丸出しの光希が言う。
「わかってるよ」
善逸が、申し訳なさそうに言う。
善逸は、お互いが回復してきて直ぐ、やりすぎたことを謝罪した。
善逸はわりと直ぐに動けるようになったが、光希はまだフラフラしている。怒っているのか、男言葉に戻してしまった。
「もうしないからな」
「うっ……また。そんな事言わないで。ほら、前よりだいぶ早く回復したじゃん」
「嫌だ」
「そんなあ……」
善逸が泣きべそをかく。
「途中でやめなきゃいけなかったね……」
「まあ、失敗から学ぶことは大事だ」
「じゃあ、またしようね!加減するから!」
美味しくないご飯をもりもり食べながら、善逸が笑う。
光希は溜息をつく。
時計を見る。
……微妙な時間だな。くそ
「あ……行きたい所あったんだよね。……どうしよう」
「……時は巻き戻せねぇ」
「ごめん」
善逸はしょんぼりする。
落ち込む彼を見て、少し言いすぎたなと光希も反省する。
善逸がしたのも光希を愛するが故の行動であり、恋人なら当たり前のことなのに。
「もう、いいよ」
「今から行くのか」
「うん。走っていく」
「ふらついてるぞ」
「でも、走る。遠いんだ」
「俺も行く」
「……ありがとう。いいのか?予定は?」
「ないよ」
「でも、……途中から別行動にしよう」
「何でだ?そもそもどこに行くの?」
「師範の家」
「育手の……?」
「そう。だから、途中から別れてお前は桑島慈悟郎様の所へ行け」
「じいちゃんの所か」
「会っておくんだ」
「えー……、確かに会いたいけどさ、柱になるまで会わないんだ、俺は。光希の方だけでいいよ」
「柱になったらまた改めて会いにいけばいい。何度でも会えばいいんだよ。会える時に会っておきな」
「光希……?」
「会わずに後悔、したくないだろ……?」
光希が悲しそうな顔で笑った。