第38章 我慢大会
「まあ……でも、女だってわかってからは、もう本当に、びっくりするくらい一気だったな……」
「なにが?」
「お前に、……落ちてくまで」
布団越しに、善逸の声だけが聞こえる。
背中の方から聞こえるその聞き慣れた声は、案外落ち着いていた。
「もしかしたら、俺は無意識のうちに、どこかで願ってたのかもしれない……こいつが女ならいいのにって……ずっと」
「へえ。善逸は私にベタ惚れだね」
「……そうだよ。ずっとお前にベタ惚れしてんだ。どうしようもないくらいにな」
顔が見えないと、素直になれる。
光希は布団からひょこっと顔を出し、善逸の方を見る。
布団にもたれている黄色い後ろ頭が見える。
光希は布団の上で頬杖をつき、ほほ笑みを浮かべて黙ってその頭を見る。
「それが、今や恋人……、しかも婚約者。人生何が起こるかわかんないね……」
「そうだな」
善逸も、布団の反対側から光希に顔を向ける。
「好きだよ」
善逸が布団の上に、片手を伸ばす。
「うん、私も」
光希も手を伸ばし、布団の上で指を絡める。