第5章 蝶屋敷 1
光希は両手を使って身体を起こす。
「おい、寝とけよ」
善逸が制するが、「大丈夫だ」と言うので、仕方なく背中に回って助け起こす。身体がふらっとしたので、そのまま横で肩を支える。
「光希、大丈夫なのか?本当に。顔真っ青だぞ」
「ああ、うん……あのな」
やっぱり言いにくいものではある。だが、この心配してくれてる二人に説明しない訳にはいかない。
ふぅ…と溜息を付いて話し始めた。
「二人とも、心配かけて本当に申し訳ない。
これは本当に病気じゃないんだ。月役…ってわかるか?」
「……月、役?」
炭治郎は首を傾げるが、肩を支える善逸の手はびくっと反応した。
……あ、意外と善逸の方が知ってた。女の子大好きだもんな。そんなに意外じゃねぇか
「あー…、女が月に一回苦しむやつだよ。月のもの…とかいった方がわかりやすいか?血が出るやつ」
炭治郎もなんとなくわかってきたようで、顔がみるみる赤くなった。光希から血の匂いがしていた理由もようやく解った。
「そ、そうか。それでアオイさん……。ごめん俺、知らなくて、その……」
「なんで謝るんだよ、炭治郎。こっちこそ迷惑かけてごめん。俺の失敗なんだよ、これ」
「そうなのか?」
「ああ。ちゃんと数えていればいつ来るかだいたいわかるんだけど、うっかりしてた。わかってれば対処できたのに」
「そういうものなのか」
「そういうものなんだ。女子は面倒くさいんだよ」
光希は苦笑いをする。
「身体は大丈夫なのかよ」
肩を支える善逸が聞く。
「ああ。さっきよりは、な。まだ痛いけど。あと貧血でふらふらする。そして気持ち悪い」
「そんなにっ!早く寝ろ、今すぐ寝ろ!」
慌てる炭治郎が寝かしかにかかる。炭治郎を制して、光希が笑う。
「あはは、毎回のことだから、大丈夫だよ。……明日過ぎれば、元気になるよ」
「そうか、とりあえず今日は寝てくれ」
「んー、じゃあそうしようかな。血が足りなくて眠いや。ありがと、善逸」
善逸に声をかけ、布団に横になる光希。
「心配かけて、ごめんな……」
ぼんやりした顔で二人を見つめる光希。
「気にするな」
「いいから、寝ろ」
そう声をかけて部屋から去る男子二人。