第38章 我慢大会
元々挙動不審なことが多い善逸だが、いつも以上におかしい。
「……今日は、別の部屋で寝るってことね。了解」
善逸の言葉でそこまで理解した光希は、くるりと身を翻して台所を出ていく。
「や、その、……」
善逸の声が聞こえたが、振り返らなかった。
雑巾と箒を用意して、部屋を徹底的に掃除していく光希。本気を出している。やけくそのようだ。
「ご飯できたよー……」と恐る恐る善逸が声を掛けに来た時は、部屋はピカピカになっていた。
台所で食事をとる二人。
「……美味しいよ。ありがと」
明らかに怒っているが、それでもきちんとお礼は言う光希。
お芋があったようで、芋粥となっていた。
優しい味が、身体にしみていく。
「いえいえ」
しーんとなる台所。
食べ終わった光希は、食器を水につけて、
「食べ終わったら水につけといて。洗い物は私がやる。ごちそうさまでした」
と言って台所を出ていった。
ぽつんと残される善逸。
……だって!だって!俺にどうしろってんだよ!
眉を寄せてわなわなと震えていた。
光希はいつも使ってる部屋の戸をガラッと開けると、押入れから自分の布団を引っ張り出す。
先程掃除した部屋に隊服や布団を運んでいると、善逸が廊下を歩いてきた。
光希は、ぷいっと無視して部屋に布団を運び入れる。
「ね、光希。とりあえずさ、喧嘩はやめようよ」
扉の向こうから、善逸が話しかける。
「……善逸が話してくんないからでしょ」
「そうだけどさ。俺だって、話しにくいこともあるよ」
カラ……と、戸が開く。
まだ不機嫌そうな光希が顔を出す。
「理由もわからずあんなに避けられたら傷付く」
「ごめん。動揺した」
「…………」
「光希だって、冨岡さん家で俺を避ける」
「ちゃんと理由を説明してある」
「まあ、そうだけど」
「部屋、入らないの?」
「……掃除してくれてありがとう。綺麗になったな」
「風呂沸かしてくるよ」そう言うと善逸は立ち上がり風呂場に行こうとする。